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2018/08/29 (2018年08月 のアーカイブ)

MIDIのTRS接続規格化

1週間ほど前、MIDI 信号を TRS (いわゆる三極プラグ)フォンジャックでの接続が規格化されたというニュースが Twitter 等で流れていたのですが、ちょっと状況を整理しておきたいと思います。

元々の規格では MIDI は DIN の丸形 5 ピンで接続するという事になっていたのですが、機器の小型化が進み、さすがに今となってはコネクタが大きすぎて支障があるという事が背景にあります。ですが、一方で最近の MIDI キーボード等の MIDI 機器は USB 接続のものがほとんどで生の MIDI 信号を扱う機会が少なくなっていたので問題が表面化していなかった、とも言えます。

流れが変わったのは 2010年頃以降、iOS デバイス用の MIDI インターフェースなんかが出始めた頃だと思います。DIN コネクタが大きすぎるのでインターフェースとしては ミニジャック経由の専用ケーブル(ブレークアウトケーブル)を同梱していた訳です。

それでまあ、そういう TRS 経由 MIDI 機器が各社からちらほらと出てきて、基本的にはその機器それぞれが専用のケーブルを同梱するという形ではあったのですが、似たような見た目なのに結線が各社ばらばらで 2.5mm だったり 3.5mm だったりになってしまったので、これはまずかろうという事で規格化されたという経緯ですね。


結果として規格化された結線は次の通りです:
TRS DIN 5pin
Sink Tip Pin 5
Source Ring Pin 4
Shield Sleeve Pin 2

なおサイズについては、2.5mm / 3.5mm どちらも否定はしていませんが 2.5mm 、いわゆるミニミニジャックが推奨となっています。

正式な規格は MMA のサイトでメンバー登録すればダウンロードできます。
https://www.midi.org/articles-old/trs-specification-adopted-and-released

また同じく MMA のこちらのページでは、結線を 「TRS MIDI A」と「TRS MIDI B」に分けて、現在ある各社の機器がどちらの結線になっているかが書かれています。「TRS MIDI A」が今回規格になった方です。
https://www.midi.org/articles-old/updated-how-to-make-your-own-3-5mm-mini-stereo-trs-to-midi-5-pin-din-cables

これによると、規格化された結線に一致しているのは、
■ Line 6 / littleBits / Korg / MakeNoise / IK Multimedia / inMusic(Akai)
です。IK Multimedia が最近出した UnoSynth もこれに沿っているようです。

逆に、
■ Arturia / Novation / 1010Music
は結線が逆になってしまった、という事ですね。

またサイズは IK Multimedia や Line 6 などの iOS デバイス向けは 2.5mm が多いですが、Korg SQ-1 なんかは 3.5mm ですので、ミニ⇔ミニミニ変換なんかが必要になります。

なお、Arturia の旧製品、BeatStep (無印、Proじゃないもの) は、TS(二極)ジャックでまた結線が違うようです。線が 2 本しかないので Tip に Source 側に信号を載せたものが出ているような感じです。


という事で現在市場に出回っている 2.5mm または 3.5mm のジャックで MIDI を接続する機器はまだこの規格に沿っていないものがかなり出回っています。

この規格ベースで何かを作りたいというような話なら、ケーブルは Line 6 か IK Multimedia(2.5mm)、Korg SQ-1用(3.5mm)、MakeNoise O-Coast用とかで売られているものを探す感じになります。モジュラー系のケーブルなら MakeNoise 用のケーブルが 5$ くらいで割合安く売られているようです。馴染みが無いと買いにくいかも知れませんが。逆結線の Arturia Beatstep用なんかも売られているようなので、間違えるとまずいですね。ケーブルの DIY 情報なんかを検索しても逆の結線のものも出てくるので、何を接続するためのものなのかは良く確認が必要です。

下の図が規格的に正しい結線のはずだけど、コネクタの male / female とかどっち側から見てるとかを勘違いして結局間違えるというのもありがちですが。

DIN の MIDI は 5ピンとは言ってもカレントループが 1 つだけなので、信号は シールドとソースとシンクの 3本だけです。TRS のスリーブはさすがにシールドに割り当てられるのが妥当なので、実質の結線としては 2 種類なのに、逆の結線にしてしまった製品がでてくるとはなんという協調性の無さ... と言ってもどちらの言い分もわかる気はするんですけどね。
カレントシンク側が信号のメインなんだからチップに割り当てるべきだろ、とか、カレントソース側はいつも電圧がかかってるのでリングに割り当てるのはなんかやだ、とか。

Posted by g200kg : 2018/08/29 11:53:40