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2020/11/25 (2020年11月 のアーカイブ)

激安プロジェクターを静音化する試み

最近は中国製の激安プロジェクター製品の勢いが凄いですね。別にプロジェクターのガチ勢でもなく映れば割と何でも良い派なんですが、ちょっと手を出してみようかと評判が安定していた Vankyo V630 という機種を買って天吊りブラケットを 3D プリンタで作ったりしていました。

2万円かそこらという値段でこれならば充分じゃないですかね。安いのは安いなりの理由があるんでしょうけど。

ただ前評判でも一部指摘されていたのですが、ファンの騒音はちょっと気になります。慣れれば気にならないという話もあるようだし個人差もあると思いますが、やはり気になるレベルではあります。それなりに賑やかな場所で使うなら大丈夫だとは思いますが。

という事でどれくらいうるさいのか測定してみました。

プロジェクターの前面から1mの距離です。まずは電源を入れる前は 41.3dBA、静かな住宅街程度の環境です。そして電源投入すると52.3dBA。これがどれくらいかというと普通のオフィスくらいの音、部屋の中で人の話し声が聞こえているくらいのイメージです。

プロジェクターの左側面に吸気口があってフィルターが入っているのですが、風切り音が結構するのでフィルターが無ければ多少変わるかと思って外してみたのですが、52.0dBA、まあ誤差範囲ですね。

さて、じゃあ買ったばかりですが中身を見てみましょうか。開けるには見えているネジの他に出荷時期を示すシールの下にもネジがあります。当然保証は無くなりますが気にしない事にしましょう。

筐体を開けて左半分を覆っている黒いプラスチックのカバーを外すと大体の構造がわかります。単板のカラーLCDにLEDランプから光を当ててミラーで反射して投射レンズに行くという単純な構造ですね。騒音の元であるファンは2個あります。左上の吸気用のシロッコファン、そして右下には見えにくいですが、ヒートパイプ付きのヒートシンクがありその裏側にファンが付いています。ヒートパイプはLEDランプの熱をヒートシンクまで引っ張ってきているようです。

光の経路は黄色の線、空気の流れは赤い線です。空気はLCDの表側と裏側をそれぞれ流れるように分岐しています。

筐体を開けた状態で電源を入れると排気ファンよりも吸気シロッコファンの音が目立ちます。このシロッコファンはネジで固定もされておらずはさみこまれているだけです。

しかしこのシロッコファン、形状がちょっと変わってますね。開口部がやたら大きいです。空気の経路がそれなりに長くて空気を押し込むための圧力が必要なので静圧に有利なシロッコファンなんでしょうけど、効率とかどうなんでしょう。
ひっぱり出してみると定格は 12V 0.30A、高速でぶん回っていて風量もかなりあります。これは速度を落としてみたいですね。筐体内温度が上がって寿命に影響するでしょうけど。

オススメはしませんけど、試しに無理矢理止めてみましょうか。おー、46dBAまで下がりますね。これくらいならまあまあ気にしないでいられるレベルなんですけどね。

うーん、どうするかなあ。


取り合えずこの吸気ファンがなかったら筐体内がどうなるのか確認してみましょうか。

通常状態で排気部あたりの温度を測ると 44℃ くらいで安定します。そして吸気ファンを取っ払って電源を入れてみると 53℃ で安定。流石に常に10度近く温度が上がるのは寿命に影響しますね。LCD付近の空気の流量が極端に減ると思うので LCD のカラーフィルターが焼ける感じでしょうか。まあおもちゃとして 1~2 年程度で使い潰すくらいのつもりならありかも知れません。


他に気になる所は、シロッコファンの出口の近くで風がほぼ U ターンしているのですが、まあ基本構造は仕方ないとしてプラスチックのあまり強くなさそうな構造に風が至近距離で直接当たっているのが良くないかも知れません。少し振動が伝わってしまっている感じがします。

対策として風の通り道にブチルゴムシートを貼ってみます。

写真がなんだかわかりにくいですが、シロッコファンから風を吹き込む入口の所をブチルゴムで覆っています。これで同じ条件で騒音を測ると 51.1dBA。微妙なんですけどまあ悪い方向には働いてないようです。このアプローチでもう少しいけるかと思ってシロッコファンの周辺にかなりベタベタと貼り付けてみましたけどこれ以上の効果はなさそうです。


ここから先はファンの回転を抑えるしか無さそうですね。昔はPCのケースファン制御用に結構色んなファンコントローラがありましたけど、最近はそういうのは減ってるんですかね。Amazonで見つけた何用だかわからないファンコントロールモジュールをシロッコファンに仕込んでいきます。

さて、これで回転数を割と自由に制御できるようになりました。やはりシロッコファンの回転数を下げると騒音レベルはかなり下がりますが、排気ファンは通常通りに回転していますのである程度以下は排気ファンの方が支配的になります。

正確な回転数はわからないので、回転を落としていった時の騒音レベルと温度の関係を何点か測定すると大体の様子がわかります。ファンがフル回転時に44℃だったのが回転を落としていくと温度が上がり始め完全に停止すると53℃になります。温度上昇を3℃くらいまで許容すれば47dBAくらいまで騒音レベルを落とせます。勿論多少なりとも温度上昇の悪影響はあるでしょうけどバランス的にはこれくらいにしたい所ですね。

という事で、騒音レベルは 47.5dBA 排気部の温度が +3℃くらいの所に設定してみました。これがどれくらいかというとエアコンの静音設定くらいの音でしょうか。これ以上の静音化を目指すなら排気ファンの方にも手を入れる事になりますが、実際の所それならまずエアコンをなんとかする等も考えた方が良い気がします。

しばらくこれで様子をみましょうか。


なお、これらの試みは基本的にいじくりまわすのが目的なので、ぶっ壊す覚悟がなければやってはいけません。温度の上昇は確実に劣化の要因になるので、普通に映画を鑑賞する事が目的ならメーカーが保証する基本性能で自分が満足するものを買った方が幸せになれると思います。

Posted by g200kg : 2020/11/25 00:39:41