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2012/12/11 (2012年12月 のアーカイブ)

KVRの歩き方

この記事はWeb Music Developers JP のAdvent Calendar 2012用の記事です。
クリスマスまで日替わりのテーマで何か面白い記事が投稿される予定ですので、興味がありましたらどうぞ!

http://www.adventar.org/calendars/22


DTMをやっている人なら「KVR」というサイトについて聞いた事くらいはあるかと思いますが、今回はこのKVRについて紹介します。

元々は管理人である Mr.KVRことBen Turl氏の個人運営のサイトだったのですが、Muse Researchの所有を経て、現在ではKVR Audio, inc.という独立した企業が運営するサイトとなっています。

ちなみに「KVR」という言葉には特に意味はないという事なのですが、昔は「KvR」とvが小文字表記になっていて、多分「Kなんとか von Rなんとか」みたいな貴族っぽい名前のイメージだったのかなと想像します。わかりませんけど...。

http://www.kvraudio.com/

KVRは世界最大の音楽制作用プラグインのデータベース/コミュニティを持つサイトで、ネット上ではプラグインを探すのなら「ggrks」じゃなくてまずKVRへ行け、みたいな事が良く言われています。KVRのコンテンツはざっくりいえば、

  • ニュース
  • プラグインデータベース
  • フォーラム

からなっています。

これらはとりあえず眺めてみるだけなら特にアカウント等がなくても利用可能ですが、アカウントがあればフォーラムなどをより積極的に利用できるようになります。アカウントの作成は画面の右の方にある赤い「Register」のボタンからメールアドレスやハンドル名を登録するだけで取る事ができ、費用は発生しませんのでまずはアカウント取ってみるのはいかがですか?

アカウントがあれば次のような事ができるようになります。

  • フォーラムへの書き込み
  • フォーラムの全文検索
  • プライベートメッセージ
  • 自分用のサイトやニュースレターのカスタマイズ
  • Developer Challengeなどのイベントへの参加

特定の製品についての反応を知りたい時などはアカウントを取ってフォーラムの全文検索をするのがなかなか有効ですよ。

ニュース

かつてはKVRがDTM関係のニュース配布元として最速を誇っていました。プラグインのアップデート情報などはまずKVRから流され、それを元にしてRekkerdMakeTunesのようなニュースサイトが転載してゆくような流れが長く続いていたのですが、最近はすこし様子が変わっています。

元々どうやってKVRのニュースが作られていたかと言うと、プラグインデベロッパーやKVRのユーザーが管理人のBen氏に基本情報をメールし、Ben氏がニュースを書いていました。しかし数年前くらいからニュースの流量が増えてこれが滞り始め、どうやらBen氏の作業がパンクしているようだとフォーラムでも話題にされるほどの状況になります。

他のニュースサイトではこの頃から独自のニュースソースによる記事も増え始め、KVRでのニュースの滞りが解消された現在でも必ずしもKVRが最速というわけではなくなっています。

さて、このKVRでのニュースの滞りの解消のために導入されたのが2012年2月のデベロッパーアカウントです。これにより、プラグインデベロッパーが自らニュース原稿を書く事ができるようになりました。「私はxxxを作りました」じゃなくて「oooはxxxを発表しました」みたいにデベロッパー自身が書いているんですね。Ben氏は基本的にそれを認証するだけです(私のつたない英語だと結構直してくれたりするんですが...)。

こういう事情で、特に零細デベロッパー製品の場合などは実はデベロッパー自身が書いている1次情報という意味でなかなか貴重だったりします。ただプラグインのアップデート情報などは、今まではデベロッパー自身が書かないニュースでも誰かがKVRに知らせてBen氏が書いていたのですが、そういうニュースは減ったようですべてが網羅されているというわけではありません。

Rekkerdなんかでは現在でもサイト側からこまめにアップデート情報を収集してますので、ある意味補完関係が築かれています。

プラグインデータベース

KVRのプラグインデータベースは規模としては世界最大です。昔は本当にあらゆるプラグインをほぼ完全に網羅していたのですが、さすがにフリープラグインが大量に出回るようになってからは漏れているものもあります。特に最近はニュースと同じくデベロッパー自身がDBに登録できるようになっていますので、あまりKVR側から能動的に収集してDBに追加する事は行っていないようで、KVRで見つからなくても複数のデータベースサイトを横断的に探せば見つかる場合もあります。

データベースの一覧性についてはちょっと微妙な所があるという気もするのですが、デベロッパー名が判っている場合は「Developers(Brands)」から探すのが早いと思います。それ以外の場合はメニューの「Plug-ins, Hosts, Apps,Hardware, Soundware」からの検索がメインになります。検索の条件設定はかなり自由にできます。「こんなプラグインを探したい」という場合だと「Operating Systems」や「Tags / Categories」あたりを設定して検索というパターンになるかと思います。

とりあえず何らかの検索動作から入らないといけないので、目的もなくなんとなくリストをブラウズするというのはちょっとやりにくいです。件数が多いのでしょうがないのかも知れませんが。

フォーラム

なんだかんだ言っても個人的にはこのフォーラムがKVRのサイトの中心で、価値のあるものだと思っています。プラグインのユーザー/デベロッパーと直接やり取りができる場ってなかなかないですからね。

フォーラムは多数の板に分かれていますが、特に活発なのは「Instruments」「Effects」「Hosts」の3つです。さらっとスレッドの一覧を見るだけでも今何がホットなのか様子が掴めると思います。

それからデベロッパーが集まっている所が「DSP and Plug-in Development」です。作っている人がメインですので、ユーザーがメインの掲示板に比べるとさすがに書き込みの量は少ないのですが、時として技術的な面で非常に有用な情報があったりします。音関係のプログラムを作る人なら目を通す価値がありますよ。例えばこのブログの過去記事で、「Faustに衝撃を受けた・・・」とか「Boomsk : JavaScriptでVSTを生成する」というWeb系としても興味深いネタもこのデベロッパーフォーラムを眺めていて見つけたものです。

メインのフォーラム群の下には「Official Company Forums」というのがあって、各デベロッパーが個別のフォーラムを持っています。私も「g200kg Forum」を持ってはいるのですが、正直なところ英語ネイティブでない人がフォーラムを持つと結構しんどいです。書き込みの量にもよりますが。

カンパニーフォーラムを持つには、まずデベロッパーアカウントを取ってから管理人にフォーラムの開設を申請します。何か審査基準のようなものがあるのかどうかは良くわかりませんが、少なくともKVRのDBにプラグインが登録されている人なら通ると思います。また、話が前後しますが、デベロッパーアカウントはまず普通のアカウントを取ってからデベロッパーとして申請するような順序になります。




という事でKVRの紹介をさせていただきました。やはり英語な所が壁ではあるのですが、ドイツ/フランスあたりの人の割合もかなり高いです。相手も基本英語はカタコトだったりしますので開き直っちゃえば良いと思いますよ。ただ、KVRのフォーラムのスタンスは非常にジェントルですので、法的に疑義があるような内容はもちろんですが喧嘩腰だったりするとモデレーターによって割合迅速に削除等の処置がされますので、2chあたりのノリでは書かない方が良いとは思います。

とにかくまだまだ日本人が少ないですし、有効活用しないとなんだかもったいないですね。

それからWeb関連の技術についてはまだ興味を持つ人があまり多くはありません。KVRに集まっている人は音楽制作の即戦力になる実用的なツールなり情報なりを期待する人が多いように思いますので、Webベースの技術がどう着目されて行くかは今後の発展次第でしょう。

Posted by g200kg : 2012/12/11 07:30:00