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2024/05/31

3Dプリンター用ミニヒーター


Creality K1 は総合的には充分優秀でもちろん形状によるのだけど、収縮の大きい ABS での造形はやはり反り(ワーピング)が完全には解消できない。
K1 にはチャンバー全体を加熱するヒーターがないため、造形済みの部分の冷却が速すぎて歪みが発生するという現象です。

という事で役に立つかどうかはわからないけど Amazon で 3D プリンター用のミニヒーターが売っていたので買ってみた。

一応 3D プリンター向けと銘打たれているのだけどこれの主目的は光造形プリンターのレジンを暖める用みたいです。設定した温度の温風を出すようなので FDM 用チャンバーヒーターとしても使えなくはないだろうという目論見です。

どう設置するかを全然考えていなかったのでとりあえず筐体内にころがしてテストします。

ABS を造形する場合はチャンバー内の理想的な温度は 70℃ くらいらしいのだけど、そう簡単には温度が上がりません。まあそこまで上がらなくも良いかとは思っていたのだけど 30 分程稼働させてもこのヒーター単体だと 42℃ 程度で頭打ちになってしまいます。室温 + 15℃くらいが限界かな。まあヒートベッドとホットエンドを稼働させればもう少し上がりますがちょっとパワー不足感はあります。

それでも何もないよりは多少ましになる感じはします。色々とパラメータが多すぎて感じだけであまり定量的な測定ができているわけではないですが。

左はヒーター無し、右がヒーターありでキャリブレーションキューブを出力した所。ヒーター無しの場合の左下隅が微妙に浮いているのがわかります。
先日発表された新機種 K2 ではチャンバーヒーターが装備されているらしいのでこの辺りはだいぶ良くなるのではないかなあ......。まあそんなにほいほいと新機種は買わないけどね。マルチマテリアルユニットは K1 向けに出るなら欲しいな。

posted by g200kg : 10:14 PM : PermaLink

2024/05/20

3Dプリンターのマルチカラー対応


ここ数年で家庭用の 3D プリンター界隈はマルチカラー対応に本気になってきましたね。

3D プリンターのマルチカラー対応と言っても色々な方式がありますが、現在各社から一斉に出始めたのは FDM (FFF) 方式で色の異なる複数のフィラメントを必要に応じて自動的に切り替える機構のものです。「マルチマテリアル」と呼ばれたりします。

今まではただでさえノズル詰まりやらベッドへの定着不良やらのトラブルが発生しがちだった 3D プリンターですが、フィラメントの切り替えという結構複雑な仕組みを商品レベルで組み込めるくらいには次の段階に入ったという事かと思います。

既に製品として流通している機種としては PRUSA の MMU (Multi Material Upgrade)、Bambu Lab の AMS (Automatic Material System)、VORON プロジェクトの ERCF (Enraged Rabbit Carrot Feeder)などがあり、私が使用している Creality でも CMS (Creality Material System) が開発中と発表されています。各製品のレビューとかを見ているとやはり Bambu Lab が一歩抜きんでているかなと思いますが Creality の今後の発表にも期待したい所です。

Creality CMS ↓

また今までの機種に追加可能なオプションとしてサードパーティー製品を開発/販売している所もあります。

1つは「3D chameleon」という製品でこれは 3D プリンターの機種を問わず 4 色のフィラメントを自動切り替えする機能を追加するというのが謳い文句で切り替えのためのコードを追加するのがちょっと面倒くさそうですが、色々な機種で実際に動かしてみたという例がそれなりにあるようです。

https://www.3dchameleon.com/

3D Chameleon ↓

他には Creality 公式のマルチカラーサポートに先立ってサードパーティとして作ってみたという Digital Inventor の FMS (Filament Management System)というものもあります。
3 色まで対応で K1 / K1 Max をターゲットに絞っている分これもなかなか良さそうに見えます。

Digital Inventor : FMS ↓

とまあ業界全体の方向性としてマルチカラーに向かっている感じはありますが、同時に問題として挙がっているのが、マルチカラー対応をするためにはフィラメントの切り替えにとにかく時間がかかる、更にフィラメントを切り替える度にノズル内に残っている色と混ざるのを避けるためにかなりの量のフィラメントを余分に捨てないといけないという事です。どのようなモデルを出力するかによりますが、単色での出力に比べて時間もフィラメントの消費も倍くらいかかるという事も珍しくはありません。公式ドキュメント等では見た事がないですが、フォーラム等では発生するゴミは poop と不名誉な名前を付けられていてそれが一般名称として使われています。

またもう少し以前の話ですが、KickStarter で「Swapper 3D」というものが発表されています。これは通常の 3D プリンターに取り付けて(当面 PRUSAがターゲットらしい)多数のノズルを切り替えられるというもので、これにより poop を発生させずに色の切り替えができるという触れ込みだったのですが、あまりにも機構が複雑すぎ、どうやら開発は予定通りには進んでいないようで先月あたりから金を返せと言うような事を言い始めている人もいます。

まあ取り合えず Creality オフィシャルの製品もそろそろ出てくると思うのでもう少し待ちましょうかね。


posted by g200kg : 10:00 AM : PermaLink

2024/05/03

3Dプリンター Creality K1 のルート化とは何なのか?


高速 3D プリンター、Creality K1 を導入して 1 年程使ってきたのですが、最近ファームウェアを最新版にアップデートしました。それで知ったのですが 2023 年末頃に公開されたファームウェアのバージョン V1.3.2.1 以降で公式にルート化ができるようになっていたようです。以前見た時には中身をハックして自己責任でこの辺りをいじっている人はいるようでしたけど、今回は Creality 公式なので安心ですね。

さて、このルート化って何なんでしょうか? というあたりの説明を。


2023 年辺りから高速動作を謳った機種が各メーカーから一斉に発表されているのですが、これらの機種は揃って「Klipper 搭載」が売り文句になっています。Klipper というのは 3D プリンターのファームウェアの事で、これまで 3D プリンター では Marlin と呼ばれるファームウェアが広く使用されていましたが、Klipper はこれを代替するものになります。

https://www.klipper3d.org/

Marlin も Klipper もオープンソースのプロジェクトとして開発が進められています。低価格な家庭用の 3D プリンターが急激に普及したのもこれらのソフトウェアを使用しているからこそなのですが Klipper ではこれまでの一般的な 3D プリンターのハードウェア構成に比べると Raspberry Pi 相当の MCU が追加されてそちらでモーターを直接駆動する MCU の前段でより高度な計算処理を行います。

例えば 3D プリンターを高速動作させると避けられない問題となってくるのが振動が発生する事で、造形物の壁に「リンギング」とか「ゴースト」と呼ばれる壁が波打つ現象が発生しますが Klipper ではあらかじめプリンターの機械的な振動を測定してリンギングを軽減する補正を行う事が可能になります。


さて Klipper はオープンソースの GPL ライセンスで開発されていますので、ソースコードが公開されなくてはならないのですが、ここに少し問題があって Creality K1 は Klipper 採用を謳っているにもかかわらず発売以来、必要な情報が完全に公開されていない、と 3D プリンター界隈では今までツッコミが入っていたわけです。

それがまあ前述のファームウェアのバージョンアップと共に公開されるようになった、と。
また、GitHub 上でも K1_Series_Annex というリポジトリがあり、ここに色々と情報が出てくるようになりました。ここにある 「K1 Series root guide」 という説明の通り、新しいファームウェアを入れると本体の設定メニューに下の写真のように「Root account information」という項目が現れます。

https://github.com/CrealityOfficial/K1_Series_Annex

この設定で Klipper が走っている K1 本体の IP アドレスに対して root 権限で SSH ログインする事ができるようになります。ログインしてみると Klipper の動作設定は

/usr/data/printer_data/config/printer.cfg

にあり、エディタとしては vi が使用可能なようです。

なお、この設定をいじる時にも Warning 画面が表示されますが root 権限でなんでもできてしまいますので使い方を間違えると K1 本体を壊してしまう可能性もある事には注意が必要です。



K1 でいじりたくなる部分については Guilouz さんという方が GitHub 上で便利なヘルパースクリプトを公開されていますのでこれを使用するのが良さそうです。

https://guilouz.github.io/Creality-Helper-Script-Wiki/

ネットワーク経由で Klipper に接続する Web インターフェースとして使用される Fluidd や Mainsail などのインストール等、役に立ちそうなものが一通りメニューで選択するだけで操作できるようになります。


これで何ができるようになるのかというと色々あるのですが、例えば下は インストールした Klipper の Web インターフェースである fluidd を OrcaSlicer の Device タブで表示できるように設定した所です。


posted by g200kg : 9:45 PM : PermaLink

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