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2020/12/26

3Dプリンターでそれなりのものを作る(塗装編)


前回 (3Dプリンターでそれなりのものを作る(分割出力編)

先日組み立てた謎楽器 a.k.a そろばんに塗装を施しました。ちょっとお試しくらいのつもりで始めたので、部分的に積層痕が残っていたり塗料の飛沫を飛ばしてしまったりと粗い部分も多いのですが、手順としてはこれでかなりの物が作れそうです。



PLAフィラメントで出力した塗装前の状態はこれです。

塗装に使用したツール。左からタミヤのポリエステルパテ、サーフェーサー、ベース色のラッカー系スプレー缶(キャメルイエロー)、エアブラシとラッカー系塗料赤、黒、希釈用シンナー、溶剤系トップコートのMr.トップコート(光沢)。

先ずはポリエステルパテを塗ったくってサンドペーパーで磨く事を繰り返して平面を出します。ポリエステルパテは硬化してもまあまあ脆いので観賞用のものならともかく楽器のような手でベタベタと扱うようなものだと盛って新たな形を付けるのは無理がありそうですが積層痕のような凹部を埋めるにはちょうど良い感じです。

PLA樹脂は硬くて削れないとか言いますが、カッターナイフ等でサクサクとは切れないという程度の話でサンドペーパーでガリガリ削るというつもりでやれば結構削れます。平面を出すために削ると造形物のスキンを突き破ってしまう事もあるので造形時にスキン部を厚めに作っておいた方が良いかも知れません。

積層痕やパーツの繋ぎ目が消えたらサーフェーサーを吹きます。ここでまだ凸凹が見つかったりしますのでパテを追加したりしつつ面を整えます。表面の凸凹などはこの段階のものが結局最後まで残りますので先を急がず丁寧にやるのが良いですね。と言いつつ今回は初めてのお試しのつもりだったのでまあまあの所で切り上げてしまったので今になって少し後悔したりしています。

しかしまあ積層痕やパーツの繋ぎ目を感じないものを作ろうと思えば作れるという事がわかったのは収穫ですね。

塗装自体はベース色の黄色をスプレー缶で全体に塗った後、サンバーストのグラデーションはスプレー缶だと無理がありそうなのでエアブラシで赤、黒の順で付けて行きます。エアブラシと言えば数10年前、何万円もするばかみたいな騒音を出すコンプレッサーを買って以来なのですが、今は1万円以下で夜中でも平気で使える充電式エアブラシとかあるんですね。技術の進歩を感じます。

グラデーション付けはとにかく注意深くやらないと失敗します。ほら飛沫とばしちゃった...修復不能。

という事で今回は100%満足という出来ではないのですが、お試しとしては充分じゃないかな。手間がかかるのでお手軽とも言えませんがいかにも3Dプリンタで出力しましたという感じがしないものも作れるという事がわかったので良しとしましょう。

posted by g200kg : 10:21 AM : PermaLink

2020/12/23

3Dプリンターでそれなりのものを作る(分割出力編)


ちょっとしたガジェットを作った時の筐体を3Dプリンターで作るというのはもう工作系界隈では良くやられている手法ですが、ネックはやはり造形サイズですかね。家庭用の3Dプリンターの造形サイズはせいぜい1辺が20cm程度なので、作りたいものがあるのだけど造形サイズにおさまらないという事が結構あります。

こういう場合はパーツを分割出力して組み立てる必要があるのですが、何度かやってみてその方式もある程度手順が安定してきたのでメモしておきます。

今回作ったのはこれ。謎楽器 BOU V.2 a.k.a 「そろばん」の筐体です。

ちなみにこの間まではこういう状態でした。

長さ方向は40cm程あります。家の3Dプリンター、QIDI X-Smart では1辺 17cm くらいが限界なので分割が必要になります。

使用するフィラメントはPLAです。今までに色々なフィラメントを試してみましたが最近は結局一番安定しているPLAを使う事が多いです。脆いので弾性を利用した嵌め込みとかは諦めるしかないですが。

データの作成

必要なデータの作成。使うツールや方法は人それぞれだと思いますが、私はBlenderを使っています。まずは組みあがった状態のモデルを作ってそれをコピペと不要部分の削除を繰り返して分割していきます。長さ方向は3分割。中に基板を仕込むので底部分と蓋部分を分けて6分割しました。

ちなみに円部分はBlenderではデフォルトで32角形として扱われますが、ネジ穴程度の大きさで32角形はそんなにプリンターの精度がないし、面ごとの微調整が必要になった時にとても面倒なので12角形で作っています。
そもそも3Dプリンターでは機種や素材にもよりますが、穴は出力すると小さくなりがちで計算通りには行かないので、例えばM3のネジを通すには12角形で何mmの穴を開ければ良いかなどの基本的な確認は予め必要です。

パーツの嵌め込み

組立の手段として考えられるのは「嵌め込み」「接着」「ネジ止め」くらいですかね。
本体構造の長手方向は接続部を次のような形状にして嵌め込みで接続します。


嵌め込むとこんな感じ。予想よりもしっかりした繋ぎになりました。差し込んだだけの状態でも乱暴に扱わなければ普通に使えるくらいの強度はあります。繋ぎ部分はデータとしては遊びなしでジャストで作成して嵌め込む際にカッターとヤスリで微調整する感じです。

パーツ間の接触面積も広く取れるので、仮り組みで確認した後、接着してしまいます。
蓋側の方は多少接触面積を稼いだ上で接着のみで接続します。

接着

PLA樹脂の接着にはアクリル樹脂用接着剤として販売されている「アクリサンデー」が最強という評判がすっかり出来上がっていますのでこれを使います。接着というか溶かしてくっつける溶着なんですが。

成分は二酸化メチレンという事で完全に粘性のない溶剤です。扱いやすいかというと結構そうでもないです。針のようなスポイトが付いているのですが油断して周りに雫を飛ばしてしまうと大抵の樹脂を溶かしてしまうのでえらい事になります。


扱いは慎重に接続面にしみこませる感じで。

接着の強度は流石に最強と言われるだけあってかなりしっかりしています。やや不安のあった蓋側の接着も充分な強度がありそうです。

ネジ止め

底部と蓋部ができたら間に基板を挟み込む形で入れてネジで止める構造になっています。
ネジ止めと言っても考えられる方法は幾つかあります。

  • ネジとナットで挟み込む
  • タッピングネジを使う
  • インサートナットを使う

ネジとナットで挟むのは簡単ですが裏にナットが丸見えなのは避けたいですね。
なので今までタッピングネジを使う事が多かったのですが、脆いPLA相手だとかなり頼りないです。一度組み立てるだけなら良いのですが何度か分解、組立をしているとあっという間にネジがバカになります。

という事で今回はインサートナットの熱圧入にしてみました。
所定のサイズで予め開けて置いた下穴に真鍮製のメネジを半田ごてで熱を掛けながら押し込んでいく方法です。

インサートナットはヒロスギ製のビットインサート等が売られています。
https://hirosugi.co.jp/technical/subjective-basis/hsb.html


これは是非おすすめしたい方法です。下穴のサイズは割と微妙なのでナットの仕様を良く確認してください。
またネジ穴に半田が入るとやっかいなのでコテ先は確実に拭き取っておく事と温度調整できるならPLA樹脂の場合は250℃くらいがベストです。

という事で組みあがりました。

積層痕が気になるとか底部と蓋部の隙間が気になる、とかまだなんとかしたい所はありますが、取り合えずこんな感じになりました。なお、底と蓋の隙間はプリンタの精度の問題ではなく、中に入れた基板の部品と筐体内側の干渉が原因です。なかなか一発で完全なものはできないですね。

もう少し手を入れて次回に続く、かもしれない...

次回 3Dプリンターでそれなりのものを作る(塗装編)

posted by g200kg : 7:03 PM : PermaLink

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g200kg